スギ花粉症や、ダニが原因のアレルギー性鼻炎でお悩みの方は、5歳以上なら舌下免疫療法を行うことが出来ます。アレルギーをおこしやすい体質そのものを改善できる根本的な治療法です。
これは、スギやダニの成分を含んだ溶けやすい錠剤を舌の裏側に置き、飲み込むことで徐々にアレルギー反応を和らげていく治療法です。薬は舌下の粘膜から吸収され、あごの下のリンパ節など免疫にかかわる組織にとりこまれます。
鼻水、鼻づまり、クシャミ、目のかゆみなどのアレルギー症状が軽くなったり、治癒したり、使用するお薬の量を減らせるなどの効果が期待できます。約2割の方は完治、約6割は症状が軽くなります。但し、残りの2割の方に関しては、目立った効果は得られないと言われています。重症の気管支ぜんそく、がん、全身性の自己免疫疾患、ステロイド内服中のかたには実施できません。妊婦、授乳中のかたにはお勧めしておりません。
抗ヒスタミン薬の内服で眠気が出る方、春先の受験期にスギ花粉症が出るのは困る方、幼児期に治療を開始して喘息などのアレルギー疾患の増加を抑えたい方などには良い治療法でしょう。
舌下免疫療法を検討するときは、血液検査でスギ、ダニのアレルゲンの特定が必要となります。スギ花粉症、ダニアレルゲンによるアレルギー性鼻炎と診断されたときは、保険診療で舌下免疫療法を行なえます。
初回は当院内で1錠を舌下に保持していただき、1分後に飲み込んで、30分間は院内で副作用が出ないか様子をみます。2日目からは毎日自宅で続けていただきます。服用後の5分間は飲食やうがいを控えます。また舌下の前後2時間は激しい運動や入浴、飲酒は避けていただきます。子供さんが運動部で朝練習などがある時は、帰宅後に内服するように注意してください。また口の中に口内炎や抜歯後で傷のある時、風邪等で体調の悪い時などは改善するまで一時的に中断してください。前日に舌下療法を行なわなかったので翌日2錠まとめて服用することは危険ですのでおやめください。
最初の1週間は低用量の錠剤を舌下投与し、再診していただき、患者さまの状態を確認いたします。特に問題がなければ、2週目からは高用量の錠剤で1か月に1度の継続治療になります。
一般的には3年にわたって継続します。スギ花粉症の舌下免疫療法ではスギ花粉の飛散が終わった6月ころから12月までに治療を開始します。ダニによるアレルギー性鼻炎のかたはいつからでも開始できます。
舌下免疫療法は続けるうちに効果が表れ、長く続けるほど効果も持続しやすくなります。スギ花粉症では最低2年(2シーズン)は継続して効果を確認します。飛散するスギ花粉の量にもよりますが多くの方は開始1年目で効果を自覚します。2年経過をみて全く改善がなければご相談の上、中止する場合もあります。ダニのアレルギー性鼻炎のかたは、開始数か月で徐々に効果を感じられる方が多いです。
舌下免疫療法によって軽い副作用が見られることもあります。代表的なものは、口腔内の腫れやかゆみ、口内炎、耳のかゆみです。治療開始の最初の1か月間に起こることが多く、ほとんどは改善していきます。ごくまれにですが、アナフィラキシーと呼ばれる重篤な反応が起こることもあります。その場合は、すぐに医療機関を受診するようにして下さい。
ただし舌下免疫療法によるアナフィラキシーで亡くなられた方はおられません。
*アナフィラキシーとは、急性の過敏反応により、医薬品投与後多くの場合30分以内で、じんましんなどの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状、突然の蒼白、意識の混濁などのショック症状が現れることをいいます。